日本で古くから花を楽しまれてきて椿(ツバキ)の育て方を解説しているページです。
椿と言えば赤い大輪の花が特徴的で、常緑性のため庭のシンボルツリーとしても人気が高いです。特に和風住宅の庭にピッタリです。
下記で椿を上手に育てるポイントをご紹介していきます。
椿の特徴
椿は、日本の本州から沖縄、台湾、朝鮮半島南部などを原産とするツバキ科ツバキ属(カメリア属)に分類される常緑性の低木もしくは高木です。
庭木として古くから人気が高く、万葉集にも登場するほか、平安時代から化粧品や食用にも用いられています。日本を代表する花木ともいえます。
椿は冬から春にかけて花を咲かせます。花の少ない時期に、赤やピンク、白などの鮮やかな花と濃緑色の葉が見せるコントラストは、冬の庭先に華やかな印象を与えます。
庭木のほかにも鉢に植えて栽培することもでき、お茶花にも利用されています。
濃い緑色の光沢のある葉が特徴で、椿という名称も、つやのある葉を意味する「艶葉木」や厚みのある葉という意味の「あつば木」など、葉に由来するといわれています。
花はとても綺麗な椿ですが香りはほとんどしません。香り椿(匂い椿)という種類もありますがそれでも香りは弱いそうです。
基本データ
難易度 | やや易しい |
流通名 | 椿、ヤブツバキ |
成長速度 | やや遅い |
花・種 | 11~12月、2~4月に赤や白などの花が咲きます |
日照量 | 耐陰性がありますが日当たりのよい場所を好みます |
温度 | 耐暑性・耐寒性ともに優れた植物です |
湿度 | 乾燥を嫌うため冬は強い風を当てないようにします |
花言葉 | 控えめな素晴らしさ、気取らない優美さ |
椿が好む環境
日当たりと植えるのに適した場所
椿には耐陰性があり丈夫な植物なので、日陰でも栽培することができます。
直射日光や西日など、強い日差しが当たる場所に植えると乾燥しやすくなるので、午前中に日が当たり午後は半日陰になるような場所が適しています。ただし、日照不足が続くと花付きが悪くなります。
乾燥すると枯れてしまう恐れがあるため、冬の間に冷たく乾いた北風が当たらない場所に植えましょう。
暑さ・寒さともに強いですが、極端な寒さは苦手なので北海道には自生していません。株が小さいうちは軒下へ移すなどの防寒をするのがおすすめです。
椿を植え付ける土には、水はけがよく有機質に富んだ土壌が適しています。地植えの場合は腐葉土や堆肥などを混ぜて肥沃な土を作ります。
弱酸性の土を好むため、ブロック塀などコンクリート製のものの近くには植えないようにします。また、粘土質の土も避けましょう。
温度・湿度
椿は耐暑性・耐寒性ともに優れた植物です。基本的には夏も冬も特別な対策をとる必要はありませんが、強い日差しや寒風による乾燥は苦手とします。
西日や直射日光が当たらない場所で管理し、北風が当たる場合は軒下などへ移すなどの工夫をしましょう。夏場の直射日光は葉焼けの原因となり、寒風が当たると蕾が落ちたりすることがあります。
建物の東もしくは南側の、やや湿度の高い明るい日陰で管理するのがよいでしょう。
用土
椿は丈夫な植物なのであまり土質を選びませんが、粘土質の土は避けましょう。健康な株に育てるには、水はけがよく有機質に富んだ弱酸性の土壌が適しています。
鉢植えの場合、赤玉土(中粒)と鹿沼土(中粒)、もしくは鹿沼土と日向土(小粒)を等量で混ぜた土に、完熟腐葉土またはバーク堆肥を少量加えた土を利用します。
地植えにする場合も、腐葉土や堆肥をすき込み有機質の土壌を作りましょう。土がアルカリ性に傾くのを防ぐため、コンクリート製のものの近くには植えないようにします。
椿を上手に育てるコツ
水やり
鉢植え・庭植えの椿ともに、植え付けてから2年未満の株には、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。鉢植えの場合、鉢底から水が流れ出るくらいの量が目安です。
花が咲いている期間は特に水分を必要とするため、水を切らさないよう管理してください。
植え付けから2年経過した庭植えの椿には、基本的に普段の水やりは不要です。降雨のみで問題ありませんが、高温になる夏の乾燥がひどい時は水を与えましょう。
鉢植えの場合は、春と秋には1日1~2回、乾燥しやすい夏場は朝と夜の2回を目安に水やりをします。冬は椿が休眠期に入るので、土の乾燥を確認したタイミングで水を与えます。
肥料の与え方
庭植えの椿には、植え付けの際に元肥として緩効性の肥料を土に混ぜ込んでおきます。
その後、1~2月に同じく緩効性肥料を寒肥として施しましょう。寒肥には開花時に株を疲れにくくする効果があります。
鉢植えの場合は、花後の3月と生育が落ち着いた9月ごろに、お礼肥として化成肥料または油かすを与えます。
肥料を毎回同じ場所に与えたり、株元に施肥したりすると、肥料焼けを起こすことがあります。肥料を施す際は違う場所を選び、株から離れたところに撒くようにしましょう。
冬越し
椿は寒さに強い植物なので、基本的には特別な防寒対策は必要ありません。
ただし、極端に低温になる地域では、寒風に当たらない場所で管理してください。冷たい北風が当たって乾燥すると蕾が落ちたり枯れたりすることがあります。
植え付けてから間もない株は寒さの影響を特に植え付けるので気をつけましょう。
冬は椿の生育がゆるやかになるため、水やりの頻度を減らします。春から秋には1日1回を目安に水を与えますが、冬は土が乾いているのを確認してから与えてください。
椿の選び方
椿の苗木は、花が咲く1~2月頃が購入の適期です。花の色や形など、気に入ったものを選んでかまいませんが、病害虫に侵されていないか確認してください。
葉色が濃くつやのあるものがおすすめです。小さな苗を買う場合は、花数の少ないものがよいでしょう。
椿の増やし方
椿は挿し木と取り木によって数を増やすことができます。
挿し木で増やす場合は、6月下旬~8月頃の作業が適しています。春から伸びた枝を先端から10~20cmほどのところで切り取り、挿し穂にします。
挿し穂の先から3~4枚を残して他の葉を取り除き、蒸散量を抑えるために残した葉も1/2ほどにカットします。
切り口を水に30分ほど浸して水揚げをしたら、挿し木用の清潔な土に挿し込みましょう。その後、空気穴を開けたビニール袋を被せて湿度を保ち、明るい日陰で管理します。
発根してから安定すれば、同じ年の9月頃には鉢へ植え替えることができます。
椿の取り木は3~6月頃におこないます。枝の樹皮を2~3cmほどの幅で木質部までぐるりと剥ぎ取り、水でたっぷり湿らせた水ゴケで包みます。
水ゴケの上からビニールを覆ってひもなどで固定し、乾燥を防ぎましょう。水を補給しながら乾かないよう管理すると1~3か月後に根が出るので、枝から切り離して鉢へ植え付けてください。
椿の植え替え
椿をずっと同じ鉢で育てていると、鉢根が回って根詰まりを起こします。根詰まりは根腐れの原因となるので、2~3年に1度を目安に植え替えをおこないましょう。
椿の植え替えの手順は以下の通りです。
- 1回り大きな鉢に鉢底ネットと鉢底石を敷く
- 清潔な用土を鉢の1/3程度まで入れる
- 鉢から株を優しく抜き出し、土を1/3ほど落とす
- 鉢の中央へ株を置いて周りに土を隙間なく入れる
- 水をたっぷり与えて7~10日ほど半日陰で管理する
鉢から庭へ植え替える場合は、鉢よりも一回り大きく穴を掘り、穴底へ腐葉土と緩効性肥料または有機肥料を元肥として入れておきます。
椿の植え替えは3~4月もしくは9月中旬~10月中旬におこなうのが適しています。
地植えの椿は、十分なスペースがあれば植え替える必要はありません。
病気・害虫
椿がかかりやすい病気には「花腐菌核病」や「すす病」があります。
花腐菌核病は、花びらに茶褐色の斑点が現れる病気です。花が咲いている時期に雨が多いと被害が大きくなります。発症した花が地面に落ちたままだと新たな病気の発生源となるため、早めに処分しましょう。
すす病にかかると、カイガラムシなどの排せつ物が堆積した枝や葉に黒いスス状のカビが発生します。病気を発見したら薬剤を吹きかけて対処しましょう。
椿につきやすい害虫には「チャクドガ」や「カイガラムシ」がいます。
特にチャクドガは発生しやすく、幼虫が葉を食害します。見つけたらすぐに葉ごと切り取って処分してください。数が多い場合は殺虫剤を撒いて駆除します。
チャクドガを退治する際は、幼虫の毛に触れると皮膚に発疹ができるので素手で触らないよう注意します。
カイガラムシは植物の養分を吸い取って株を弱らせる害虫です。すす病の原因ともなるので、見つけ次第こすり落とすか薬剤を用いて駆除します。