皮ごと食べる柑橘類、キンカンの育て方を解説しているページです。
美味しいキンカンは皮が甘く、同じ柑橘類のみかんとはまた違った味わいがあります。また、家庭菜園でも簡単に育てられるので食用や鑑賞用等、様々な用途で栽培されている果樹でもあります。
下記ではキンカンを育てる際のポイントや管理方法についてご紹介しています。
キンカンの特徴
キンカンは中国が原産、ミカン科キンカン属の果樹です。
成長しても2m程度の低木で管理もしやすいのが特徴で、病虫害も少なく丈夫で育てやすい事から初心者向けの木になります。
キンカンには色々な種類がありますが、食用として利用されているのは主にネイハキンカン、マルキンカン、ナガキンカンです。
一般的にシロップ漬けにするイメージが強いですが、キンカンの実は生食も可能です。皮ごと生で食べるとビタミンAやビタミンCも摂取できます。
他にもカルシウムやヘスペリジン、β-クリプトキサンチン、シネフリン等、体調管理を意識している人にとって摂取したい成分も含んでいるので、積極的に取り入れたいですね。
庭木として1本植えておくのにもおすすめです。
基本データ
難易度 | 易しい |
流通名 | キンカン |
成長速度 | 植え付けてから実生まで3年以上はかかります |
花・種 | 白いミカンに似た花を咲かせ、実の中に7~10㎜程度の小さな種が出来ます |
日照量 | 日なたを好む |
温度 | 耐暑性は高い |
湿度 | 多湿を嫌う |
花言葉 | 思い出、感謝 |
キンカンが好む環境
日当たりと植えるのに適した場所
キンカンは日光が好きなので、地植え、鉢植え共に日当たりの良い場所で育ててあげてください。また、多湿状態の環境だと病気の原因にもなるので、風通しが良い場所を選び育てます。
地植えにした場合、成長するとたくさん葉を茂らせ方が沢山の実をつけます。2m程度の大きさになりますので、2m四方のスペースは確保できる場所を選ぶとよいです。
また、ある程度の風通しの良さは必要ですが、強風が当たる場所では実が出来た際に傷が入りやすくなります。天候によって強風が当たりやすい場所は避けて管理してください。
地植えの方が良く育つのですが、夜間や朝方に‐5℃以下の気温が続く地域では、鉢植えにして温度調整が出来る場所に移動できたほうが良いでしょう。
温度・湿度
キンカンはある程度耐暑性が高いといわれていますので、特に夏場の暑さに関しては問題ありませんが、耐寒性で言うと‐5℃以下の環境下は苦手です。
温かい地域での栽培では地植え栽培でも問題ないのですが、‐5℃以下の温度条件が続く地域での栽培の場合は、鉢植え管理にして、温度が下がる時期は日当たりの良い屋内に移動して管理するといった方法で育てていく事をおすすめします。
湿度に関しては土壌の水はけを良くしましょう。
キンカンは水はけが悪いと土がいつまでも湿っている状態になり、生育環境的にも良くありませんので、適度に水はけが良い、ジメジメ状態が続かない土壌環境にしてあげる事も大事です。
用土
キンカンを植える際の土作りに関しては、適度に水はけと水持ちが良い様であればあまりこだわらなくても大丈夫です。
地植えの場合は、水はけが良い場所を選んで、掘り起こしてから腐葉土を混ぜ込んで準備しておきます。
もし、土作りをする場合は赤玉土と腐葉土を混ぜます。混ぜる割合は土の量5に対して同量の赤玉土と腐葉土を混ぜた土5の割合で混ぜ込むと良いでしょう。
鉢植えで育てる場合は、赤玉土7に対して腐葉土が3程度がおすすめです。今ご紹介した土でも良いですが、市販の果樹用培養土を購入して使用するのも便利です。
キンカンを上手に育てるコツ
水やり
地植えで育てている場合、もし雨が続かない日が続いている時は水やりをした方が良いですが、普段は特に水やりの必要がありません。
鉢植えで育てている場合は、土の表面が乾いた時に水やりをします。朝か晩どちらかに鉢根から水が流れ出るくらいの水を与えてください。
春から夏にかけては乾燥しやすいです。乾燥がひどい場合は花実の付き具合が悪くなるといった影響も出てきますので、水切れは起こさない様に様子を見つつ水やりをしてください。
肥料の与え方
地植えで育てている時の肥料は1年に2回。2月と10月に与えます。
鉢植えで育てている場合は、年に3回。2月と5月、10月に肥料を与えてください。
肥料は油かすや鶏糞といった有機肥料か化成肥料を与えてください。
キンカンに与える化成肥料はチッソ、リン酸、カリウムのバランスをチェックしてください。
チッソの割合が多いと葉の茂りだけが良くなってしまうので、それぞれの成分が同等、もしくはチッソの割合が少なめのものを選びましょう。
冬越し
キンカンは寒さが苦手です。寒さが続くと葉が落ちてしまいますし、充分に育っていない若木だと枯死してしまう場合もあります。
0度前後が続く温度環境の場合は、鉢植えで育てて屋内に移動する事をおすすめします。屋内での管理ではなるべく日当たりが良い場所を選び、日に当ててあげましょう。
屋内に移動するタイミングは霜が降りてくる前です。早めに移動してあげてください。
西日本で温かい地域、そして冬でも霜が降りない環境で栽培されている方は特に冬超しの対策はしていないという方が多いです。
キンカンの選び方
キンカンの苗は、幹がしっかりと太く葉が元気なものを選びます。虫害がないかもチェックしてください。
キンカンで食用に適しているのは、ネイハキンカン、マルキンカン、ナガキンカンです。
ここ最近では種なしのプチマルという品種があります。キンカンは皮ごと食べる果物なので種がない方がおすすめです。
酸味が強く食用に向いていないため、観賞用として流通している種類は、チョウジュキンカン、マメキンカン、トウキンカン等があります。
キンカンの苗は色々な種類がありますので、苗を選ぶ時に参考にしてみてください。
キンカンの増やし方
キンカンの実から種が採れ発芽させて育てているという例もありますが、種から増やす方法はあまりおすすめしません。
種から育てると成長はしますが、親とは一緒にはならずほぼ品質が劣る実になる事が多いからです。
キンカンを増やす方法は一般的に接ぎ木をする事が多いです。3月下旬から5月上旬の休眠枝つぎをするか、8月中に芽つぎをするといった方法です。
休眠枝つぎを例にしますと、穂木は40℃程度の角度のくさび型にカットし、台木の部分もくさび状の穂木が入り込める程度に切り込みを入れます。接ぎ木のポイントは木の皮のすぐ内側にある緑色の薄い「形成層」同士をつながる様に接ぐとうまくいきます。
接いだ箇所は昔は蝋を使って固定、保湿していたのですが、最近は接ぎ木用の「メデール」という専用のテープがあります。接いだ箇所をまんべんなく巻く感覚でテープを止めてください。メデールテープは後で外す必要はありません。
若干コツが必要なので、接木苗を購入して育てる方法が無難です。
キンカンの植え替え
キンカンは春に植え替えるのが一般的です。3月から5月あたりの時期で植え替えを行います。
地植えにする場合は、50㎝程度の穴を掘り、苗の根を軽くほぐし、植え付けます。植え付けた後に支柱を立てて、水やりをしてあげましょう。
鉢植えで育てている場合は、根の周りが早いので1年に1度は植え替えをしてあげる事をおすすめします。
これまでに植えていた鉢根よりも一回り大きめの鉢を準備し、根の部分を軽くほぐした後に植え付けてあげます。植え付けた後は支柱を当ててあげて、水やりをします。
植え替え後に立てる支柱ですが、1m程度のものを準備してあげると良いでしょう。
病気・害虫
元々他の果樹に比べると病虫害による被害は少ないキンカンですが、風通しが良くない環境で育てている場合はカイガラムシが付くことがあります。
見つけ次第使わなくなった歯ブラシを使って駆除してあげましょう。
後は春先にアゲハチョウの幼虫がついている事があります。アゲハチョウの幼虫は大食いで葉をどんどん食べてしまうので、見つけ次第すぐに駆除しましょう。
温かい時期にアブラムシがついてしまう事がありますので、見つけたらテープを使って駆除します。