淡い紫色の大きな花がとても美しい山野草、シラネアオイの育て方をまとめているページです。
シラネアオイは北海道から本州北部に自生する植物ですが、観賞価値が高く盗掘が多いことから一部の都道府県ではレッドリストに指定されている植物です。しかし、現在はインターネット通販で栽培品が容易に買える時代でもあるので、育てたい方はそちらを利用しましょう。
このページではシラネアオイを上手に育てるポイントについて解説していきます。
シラネアオイの特徴
みなさんはアオイとムクゲ、フヨウの違いをご存じですか? 花を見るとみんなよく似ていて、見分けるのはなかなか難しいものです。
大きな違いは、アオイ(フルネームはタチアオイ)はアオイ科の草本、ムクゲ、フヨウはムクゲ科の木本、つまり草と木という大きな違いがあります。では、シラネアオイはというと、草本という意味ではタチアオイと共通しているのですが、残念ながらキンポウゲ科に属し、タチアオイとは同じ仲間ではありません。
ただ、タチアオイによく似た花を咲かせ、日光の白根山に多いところからこの名がつきました。ヤマフヨウ、ハルフヨウとも呼ばれ、ここでもフヨウとアオイの混同が見られます。
亜高山帯に生息するものの、いわゆる高山植物ではありません。とはいえ、美しい大輪の花は開花期間が長くてファンが多いため、盗掘のせいで自生株が非常に少なくなっています。近年はシカの食害も影響しているようです。
北海道をはじめ秋田、福島、宮城、長野、栃木、群馬県などではレッドリストに指定されているのは仕方がないことかもしれません。
基本データ
難易度 | 難しい |
流通名 | シラネアオイ、ヤマフヨウ、ハルフヨウ |
成長速度 | 普通 |
花・種 | 花期は5~6月。7 cm前後の大きく薄い紫色の大きな花を咲かせるが、これはガクと呼ばれるもの。数は少ないものの白い花を咲かせる種類もある。花が散ると平らな果実ができ、秋に種子を散らす |
日照量 | 明るい半日陰を好む。強い日差しを浴びると葉焼けする |
温度 | 耐寒性はあるが、耐暑性は弱い |
湿度 | 蒸れに弱く、風通しのいい場所で育てる |
花言葉 | 完全な美、優美 |
シラネアオイが好む環境
日当たりと植えるのに適した場所
自生地は北海道~本州北部の日本海側で、低山~亜高山帯の木陰に生えています。そのため、年間を通して明るい日陰というのが基本になります。
春の芽出し時期は日なた、もしくは30%程度遮光します。そして、5月中旬からは50~70%のかなり遮光した状態にします。日差しが強いとすぐ葉焼けしますから注意してください。
また、暑くても葉が枯れ落ちますから、できるだけ風通しのいいところで管理します。秋になっても葉が残っていたら再び日なた、または30~50%の遮光率に戻します。その後は葉を落として休眠期に入りますから、翌春の芽出しまで軒下、棚下などに移動させます。
地植えの場合はやはり日陰が基本で、大きな木の下などの1日中日陰になるところに植えます。
温度・湿度
涼しいところが好きな植物なので暖かいエリアの平地栽培はかなり難しいと思ってください。まず、夏場はできるだけ気温を下げる努力をします。木陰や建物の影など常にひんやりしていて風通しのいい場所が理想的です。
鉢内を冷やすためには二重鉢にするのもいいでしょう。乾燥を嫌うので湿り気はある程度必要ですが、高温多湿は苦手としています。鉢植えなら水はけのよい用土を利用して、地植えでは斜面に植えるなどして水が溜まらないようにしてください。
用土
水はけが最優先で、次いで保水性のあるものが望ましく、鉢植えなら市販の山野草培養土が簡単で確実です。
自分で準備する場合は赤玉土、鹿沼土を基本にして、あとは軽石や桐生砂を混ぜます。軽石、桐生砂は排水性や通気性がよく、なかなか風化しないため長期にわたって使用できるというメリットがあるのです。
水はけのよくない土壌で地植えにする場合は深めに掘って瓦かけ、鉢かけ、ゴロ土などを埋めておくとある程度改善できるでしょう。
シラネアオイを上手に育てるコツ
水やり
乾燥を大の苦手としていますから、用土の表面が乾いたらたっぷりと水やりします。特に、芽出しから開花までの間に乾燥しすぎるとその後の生育に悪影響を与えかねません。ただし、加湿は嫌いです。
機械的に水やりをするのではなく、あくまでも用土の乾き具合に応じて水やりしてください。注意してほしい点がいくつかあります。
開花期間中は株元にだけ水やりします。花を濡らすとダメージを受けるからです。夏場は鉢内が蒸れないように夕方になって気温が下がり始めた時点で水やりをし、ついでに葉水をかけます。
冬季もこまめにチェックして、乾燥すれば控えめに水やりをしましょう。
肥料の与え方
施肥のタイミングはパターンとして三回あります。まず植えつけ・植え替え時の元肥です。次が春の芽出し前。この時期は生育と開花のため肥料は欠かせないと思っていいでしょう。
次が花後のお礼肥え、そして秋の追い肥です。いずれも緩効性の化成肥料がおすすめで、この時期なら根に負担がかかりません。また、生育中は2週間に1回のペースで水やり代わりに液肥を施します。
秋は葉が残っているときだけ施肥します。夏に枯れ落ちてしまえば必要ありません。真夏、真冬は不要です。
冬越し
多年草のパターンとして冬季は地上部が消滅し、休眠期に入ります。したがって、冬季はほとんど放置していいのですが、シラネアオイに限るとそういうわけにはいきません。
寒さには強く、根はわずかでも活動しているため水やりが欠かせないのです。といって、多湿にすると根は傷みます。湿り気を保つ程度で水やり管理します。
また、寒さに強いといっても凍結すると根が傷みます。軒下に移動するか、腐葉土などでマルチングしてください。
シラネアオイの選び方
購入時期が春であればツボミを確認しましょう。ふたつ、みっつあればすぐに開花を楽しむことができます。
葉が繁っていれば細かくチェックしてください。シラネアオイの株を充実させて立派な花を咲かせるのはひとえに葉の光合成にかかっています。虫食いがなく黄ばんでもいない健康な葉を持つ株が理想的です。
シラネアオイの増やし方
植え替えの際に行う株分けが一般的です。2~3月に植え替えするとすでに小さな芽が出ていますから、ハサミを使わず、手で軽く力を入れただけで分けられる範囲で行います。ダメージが少ないとすぐ開花しますから2倍、3倍楽しめることになるでしょう。
花が終わると果実ができ、秋にはタネを採取できます。これを取り蒔きして軽く覆土すると翌年に発芽するものの、開花するまで4~5年かかりますから、乾燥させないよう気長に管理してください。
シラネアオイの植え替え
軽石や桐生砂は長く使えますが、他の用土は崩れやすいためできれば2~3年に1回は植え替えしたいところです。要は根の回り方で、鉢内でいっぱいになっていれば早い機会に植え替えを行ってください。
時期は秋~冬がお勧め
シラネアオイは夏が終わって秋を迎えると葉を落とし、休眠状態に入ります。それからが植え替えの適期で、芽が動き始める前の2月には済ませておきましょう。生育期に根にダメージを与えると株が弱ってしまいます。
鉢は大きめの山野草用を
シラネアオイの鉢選びで注意してほしいのは水はけです。鉢底の穴が大きく、通気性のいい素焼き鉢を用います。また、夏は温度変化を少なくしたいので大きめの深鉢がいいでしょう。なお、植え替えが終われば1週間ほどはたっぷり水やりしてください。
病気・害虫
軟腐病はバクテリア、白絹病はカビと病因は異なりますが、高温多湿の状態ではどちらも発生しやすくなります。できるだけ涼しく風通しのいい環境下に置くのはこれも理由です。
また、軟腐病は傷口からバクテリアが侵入しますから、株分け時にはハサミを使わないようにします。
害虫はナメクジ、ヨトウムシ、ダンゴムシなどに注意してください。通常、ダンゴムシは被害を及ぼすことはないのですが、大量に発生すると新芽や花を食害します。早い機会に捕殺しましょう。