冬生育型の多肉植物の代表的な存在アエオニウム。
茎立ちしていく姿が特徴的でもあるアエオニウムの育て方について解説します。
アエオニウムの特徴
アエオニウムはカナリア諸島や東アフリカを原産とするベンケイソウ科アエオニウム属の多肉植物です。穏やかな気候の地域に40種ほどが分布しており、園芸品種も多数あります。
品種によって株の大きさは様々で、葉の色も真っ黒なものから明るい緑、白や黄、紅色に染まるものまで変化に富んでいます。班入りの品種も見られます。
艶のある黒い葉を持つ「黒法師」はアエオニウムの中で最も知られる品種です。他にも、葉の縁にピンクや黄色の班が入る「サンバースト」や、黄色味を帯びた班が赤色に変化する「夕映え」などが代表的です。
多くの品種は低く伸びた茎の先にロゼット状の葉をつけますが、「明鏡」や「オーレウム」のように茎立ちしないものもあります。
アエオニウムは2月から6月にかけて花を咲かせますが、咲き終わると株も枯れてしまいます。長く育てたい場合は早めに花茎を剪定しましょう。
基本データ
難易度 | 普通 |
流通名 | アエオニウム |
成長速度 | やや遅い |
花・種 | 2~6月に白・黄・ピンク色の花が咲きます |
日照量 | 日当たりを好みますが夏の直射日光は避けましょう |
温度 | 寒さにはやや弱いので冬は5℃以上を保ちます |
湿度 | 高温多湿を嫌うので夏は水やりを控えましょう |
花言葉 | 永遠、先取り、いい予感 |
アエオニウムが好む環境
日当たりと置き場所
アエオニウムは日光を好みますが、葉焼けを防止するため夏の直射日光は避けてください。
屋内で育てる場合
アエオニウムは屋内で育てることもできますが、日によく当たったほうが色鮮やかに育つため明るい場所に置いて管理します。日照不足が続くと葉が間延びしてしまいます。
ただし、直射日光に当てると葉焼けを起こす可能性があります。強い日差しを好む品種もありますが、真夏の日中は窓辺など日光が直接当たる場所は避けたほうがよいでしょう。
寒さにはやや弱いため、冬場の室温は5℃以上を保つようにします。
屋外で育てる場合
アエオニウムは日光を好む植物なので、春から秋にかけては風通しのよい日なたで管理してください。
ただし、夏は休眠期となるため強い日差しが当たると葉焼けを起こしてしまいます。高温になる夏の期間は半日陰に移しましょう。
冬の寒さにはあまり強くないため、戸外の気温が5℃を下回ってきたら暖かい室内へ取り込みます。
温度・湿度
アエオニウムは寒さにやや弱く、耐暑性もあまり強くありません。
日光に当てたほうが色艶よく育ちますが、高温になる真夏の時期は直射日光を避けて明るい日陰で管理してください。
屋外で育てている場合、冬になって5℃を下回り始めたら室内へ移動させましょう。霜や雪に当てると葉が凍って枯れることがあります。
アエオニウムは葉に水分を溜めるため乾燥には強いですが多湿は苦手です。土が常に湿った状態になると根腐れを起こすので、水の与えすぎには注意します。
用土
アエオニウムは多湿を苦手とする植物です。土が過湿状態になると根腐れを起こしてしまうため、用土には水はけの良い土を使用してください。
自作する場合は赤玉土(小粒)2:鹿沼土2:ピートモス2:川砂2:燻炭2の割合でブレンドした土、もしくは川砂と腐葉土を6:4で混ぜた土に赤玉土や鹿沼土を加えたものを使います。
初心者であれば、市販されている多肉植物用の土やサボテン用の土を使うのが最も簡単です。
アエオニウムを上手に育てるコツ
水やり
アエオニウムは冬型の植物です。生育期となる10~5月には土が乾いたらたっぷりと水を与えてください。
鉢の底から水が流れ出るくらいの量が目安です。土の過湿を防ぐため、受け皿に溜まった水はすぐに捨てましょう。
夏場の6~9月は休眠期に入るので水をあまり必要としません。水やりは月1~2回に止め、土の表面を湿らせる程度の量を与えます。霧吹きで水を吹きかけてもよいでしょう。
夏は蒸れを防ぐため日中の水やりは避け、夕方以降の涼しい時間帯に与えます。
アエオニウムは葉に水分を貯める多肉植物なので、乾燥には強いですが湿気は苦手です。水不足よりも水の与えすぎに注意してください。
葉水
アエオニウムのような多肉植物は葉に水分を蓄えているため、定期的な葉水は不要です。
ただし、水をあまり必要としない夏場の休眠期には、水やりの代わりに葉水を与えてもよいでしょう。室内の冷暖房による乾燥が気になった時にも葉水は有効です。
アエオニウムは湿気が苦手なので、葉水を与える際は葉の表面が薄く濡れる程度に止めましょう。真夏は水滴で葉が蒸れることがあるので、夕方以降の時間帯に与えます。
肥料の与え方
アエオニウムのような多肉植物には丈夫なものが多いため肥料はあまり必要としません。
生育の状態を見て気になるようであれば、生育期となる10月~5月にリン酸とカリが多く含まれているもの与えます。少量の緩効性化成肥料を置き肥するか、規定の濃度よりも薄めの液体肥料を施します。
夏の休眠期はアエオニウムの生育がゆるやかになるため肥料は与えないでください。肥料の量が多いと根を傷める可能性があります。
冬越し
寒さにはやや弱いため気温が低くなる冬場は室内へ取り込み、日当たりと風通しのよい場所に置いてください。室温は5℃を下回らないようにします。
アエオニウムは冬に生育する冬型の植物です。水やりの際には鉢底から流れ出るくらいたっぷりの量を与えます。ただし多湿には弱いため、必ず土の表面が乾いてからにしましょう。
春になって戸外に出す時は、葉焼けしないようすぐに日なたへ移さず徐々に日光に慣れさせてください。外の日陰で1週間から10日ほど置いてから半日陰に移し、少しずつ午前中の日光に当ててあげます。
アエオニウムの選び方
アエオニウムを購入する際には害虫が付いていないか必ず確認してください。害虫が付着したものを買ってしまうと株が傷んでしまったり他の植物に被害が及んだりする可能性があります。
株がグラグラせず安定しており、土が湿りすぎていないものを選びましょう。
アエオニウムの増やし方
アエオニウムは挿し木と株分けによって増やすことができます。
挿し木で増やす場合は、茎を先端から10cmほどの長さで切り取り、挿し穂として使用します。土に埋まる部分についた葉を取り除き、日陰に2~3日置いて切り口を乾かします。
切り口が乾燥したら新しい土に挿し込んでください。切り取った茎をそのまま2~3週間ほど日陰に置いておき、発根してから用土に植え付ける方法もあります。
群生するタイプのアエオニウムは株分けでも増やせます。植え替えのタイミングで株をコンパクトに仕立て直したい時には株分けをするとよいでしょう。
アエオニウムの株分けは、まず乾燥させた鉢土から親株を抜き取り、根についた土を揉み落とします。
ナイフを使って2~3つに分け、切り口を日陰で乾燥させてください。切り口が乾いたらそれぞれの株を新しい鉢へ植え付けて完了です。
植え付け後はすぐに水やりをせず、株が安定してきたら水を与えましょう。アエオニウムの挿し木と株分けは3~5月もしくは10~11月頃が適期です。
アエオニウムの植え替え
成長したアエオニウムを放っておくと鉢に根が回って根詰まりを起こしてしまいます。根詰まりは根腐れの原因となるため、2~3年に1度はひと回り大きな鉢へ植え替えましょう。
アエオニウムの植え替えは以下の手順でおこないます。
- 植え替えの数日前から水を控えて土を乾燥させる
- 1回り大きな鉢に鉢底ネットと鉢底石を敷く
- 清潔な土を鉢の1/3程度まで入れる
- 鉢から株を抜き出し、根についた土を揉み落とす
- 鉢の中央へ株を置いて土を追加し、馴染ませる
- 半日陰で管理し1週間~10日後に水を与える
株を鉢から抜いた際、傷んだり腐ったりしている根があれば取り除いてください。
アエオニウムの植え替えは休眠期を過ぎた9~11月、もしくは3~5月頃が適しています。
病気・害虫
アエオニウムには特に目立った病気にかかる心配はありません。
管理の状態によっては葉が間延びして形が崩れたり、色あせたりすることがあります。日照不足や水の与え過ぎが原因なので、置き場所や水やりの頻度を見直しましょう。
アエオニウムに付きやすい害虫にはアブラムシやカイガラムシ、ネジラミがいます。
アブラムシやカイガラムシが付くと葉や茎から栄養を吸い取って株を弱らせます。数が少ない場合は手や粘着テープで取り除き、被害が大きい時は薬剤を使って駆除します。
カイガラムシの成虫には薬剤が効きにくいため、歯ブラシなどでこすり落としてください。
ネジラミは根にまとわりつくように発生する楕円形の白い虫です。植え替え時に根をよく確認し、ネジラミが付いていたら根を洗って薬剤に浸します。その後は根を乾燥させてから新しい鉢へ植え付けましょう。