青紫の花がとても綺麗な山野草、キキョウ(桔梗)の育て方をまとめているページです。
キキョウには他に白い花を咲かせる品種もあり、太い根は漢方として利用される事があります。日本全土に分布する植物のため育てやすく、比較的メジャーな植物です。
下記ではキキョウを育てる際のポイントについて解説しています。
キキョウの特徴
キキョウは全国の日当たりのいい草原に自生している多年草で、初心者でも育てやすく、一度根付けば毎年花を咲かせます。
万葉集には朝顔の名で登場し(現在のアサガオは奈良~平安時代にわが国に入ってきたものです)、古くから親しまれて家紋にも採用されています。
太い根は漢方薬に用いられ、秋の七草のひとつとされています。もっとも、キキョウが開花するのは秋ではなく、夏です。
暑い中、涼しげな紫の花を咲かせるとあってわが国では人気の高い植物のひとつです。ただ、近年はキキョウの好む草原が開発されて少なくなっており、絶対数が少なくなっています。
その結果、絶滅危惧種に指定されているのが実情です。園芸品種は多数出回っているものの、自然の環境でお目にかかれなくなっているのは寂しい限りです。
基本データ
難易度 | 易しい |
流通名 | キキョウ、オカトトキ(岡止々支) |
成長速度 | 普通 |
花・種 | 高さ10~120㎝の茎の先に直径5~7㎝の花を多数咲かせる。開花期は長く、6~10月の間に次々と咲き続ける。花色は紫、白、ピンクなど。8~11月に熟した果実から種を採取する |
日照量 | 日光を好む、日陰では育たない |
温度 | 耐寒性、耐暑性とも強く、特別な処置は必要ない |
湿度 | 過湿は避ける |
花言葉 | 永遠の愛、気品。紫花は気品、白花は清楚 |
キキョウが好む環境
日当たりと植えるのに適した場所
キキョウの原産地は東アジアの日本、中国、朝鮮半島などです。日本の気候にはなじんでいますから、日当たりと水はけに注意すれば元気よく育ってくれます。
まずは日当たりです。自生しているのは草原ですから風通しはよく、朝から晩までたっぷりと日光に晒されています。日陰では正常に生育できません。
もうひとつ注意したいのが水はけで、地植えの場合は土壌が大きく影響します。
粘土質で常時ジメジメしているところでは立枯病や茎腐病が発生しやすくなります。腐葉土を混ぜ込んで土質を改良するか、15~30㎝の盛り土をして水はけに努めます。
温度・湿度
キキョウは夏に花を咲かせる植物です。夏の暑さは大好きですから、水切れにさえ注意していれば特にやることはありません。
ただし、強い西日が当たると葉焼けすることがあります。もうひとつ、熱が溜まらないように風通しのいいところを選んでください。
涼しくて湿度が高いと灰色かび病が発生しやすくなりますからこの二点には注意しなければなりません。
耐寒性は強く、凍結して根がダメージを受けない限りどんなに気温が下がっても問題はありません。
用土
キキョウに用いる用土は水はけを最優先します。そのため、有機質をたくさん含んでいるものが理想的です。
それに加えて、どちらかというとやや酸性の用土を好みますから、赤玉土よりも鹿沼土の方が適しています。
とはいえ、それほど土質にはこだわりまませんから、赤玉土に腐葉土を混ぜたものや市販の草花用培養土でも十分育ちます。
地植えの場合も腐葉土をたっぷり混ぜてやりましょう。過湿にやや弱いため盛り土をすると病気や根腐れの心配がなくなります。
キキョウを上手に育てるコツ
水やり
キキョウは乾燥を嫌いますから、鉢植えでは表土が乾いたら鉢底から流れ出るくらい十分に与えるというのが基本です。
特に、夏は乾きやすいので、朝夕の2回水やりする場合も珍しくありません。冬は地上部がないのですが、土が完全に乾いてしまわないように、湿気を帯びる程度の水分は欠かせません。
ただし、水分が多いと凍る可能性があります。土が凍ると根がダメージを受けます。夜間の気温が下がると予想されるときは、水やりをするのは午前中にしておきましょう。
地植えでは晴天が続いてよほど乾燥しない限り水やりする必要はありません。
肥料の与え方
地植えではほとんど肥料は不要です。元肥として堆肥を混ぜ込んでおくだけで十分です。
対して、鉢植えの場合は芽出し肥え、お礼肥えが欠かせません。また、植え替えたときにはやはり元肥を施しておきましょう。
リン酸、カリが主体の緩効性化成肥料を使います。3~5月は芽出し肥えの時期です。
油かすと骨粉を混合した親指サイズの肥料を月に1回与えます。お礼肥えは6~9月に液肥を2000倍に薄めて、月に2~3回水やりを兼ねて与えます。
開花中なのにお礼肥えというと違和感を覚えるかもしれませんが、植物が花を咲かせるというのはかなり負担がかかるのです。
特に開花時期が長いキキョウは負担が大きいため、その間も施肥を続けます。
冬越し
キキョウは秋が終わると枯れ始め、やがて地上部は消失しますが、その前に株元で切り詰めます。
枯れた茎がいつまでも残っているとカビが発生したり腐ったりする可能性があるのです。
根だけで越冬しますから寒さには強く、気温が0度を下回っても影響はほとんど受けません。
特に霜よけなどの処置は必要ありませんが、エリアによっては強い霜が下りるところがあり、そういうところでは鉢を移動するか、地植えでは腐葉土を厚めに被せます。
キキョウの選び方
茎が細くて倒れやすい、折れやすいという特徴がキキョウにはあります。そこで、ポット苗はできるだけ茎がしっかりしているものを選びます。
ツボミが付いている時期であれば極力たくさん付いていた方が楽しめます。葉も鮮やかなものがお勧めです。
キキョウの増やし方
キキョウは種、株分け、芽挿しと三通りの方法で増やすことができます。
種は市販、または自分で採取したものを冷蔵庫で保管して2~5月に蒔きます。
時期が長いのは発芽温度が15度前後だからです。関東では4月と思っていいでしょう。
専用土に蒔いたら乾燥させないように霧吹きするか腰水(底面吸水)をします。植えから水やりをすると種が流れてしまいます。
株分けは植え替えをしたときにします。
手で分けられないときはハサミで切りますが、あまりこまかく分けないようにしましょう。
挿し芽は5~6月が好機です。
新芽の先端を種蒔き用の土に挿し、風通しのよい半日陰に置きます。絶対乾かさないようにしてください。
キキョウの植え替え
鉢植えのキキョウはすぐ根詰まりしますから毎年植え替えなければなりません。
時期は芽出し前の2~3月が適期です。この時期を逃した場合は秋に植え替えます。
太くてゴボウのような根
キキョウには太くてまっすぐ下に伸びる根があります。
漢方薬の世界ではこれを桔梗根(キキョウコン)と呼び、セキやタン、ノドの痛みに効果があるとされています。これを傷つけると株が弱るので注意してください。
鉢底に根が回っているときはほぐす
太い根からは細い根がたくさん伸びています。実際にはこれが水や養分を吸うので大切なものなのですが、1年も経つと鉢底で密集します。
植え替えるときはこれをほぐし、一回り大きな鉢に植えます。
根をほぐしづらければ切れ目を入れる
なにかの事情で植え替えができず、根がほぐせないほど密集している場合はハサミで切れ目を入れます。
程度が軽ければ2か所、重傷の場合は4か所ほど切れ目を入れてください。
病気・害虫
鉢植えの場合はほとんど心配ありませんが、地植えでは夏になると立枯病、茎腐病が発生します。
主に水はけが悪いのが原因なので、盛り土するか水はけのよい土に改良すれば改善されます。
害虫はほとんどつきませんが、ハダニやクロウリハムシ、アブラムシ、ヨトウムシがたまに出現します。
まれに、根に寄生するネコブセンチュウが発生することもあります。
毒性や危険性について
キキョウの根はサポニンを多く含んでおり生薬として利用される事もあります。
根に含まれるサポニンがセキ、タン、ノドの痛みなどに効果があるとされていますが、素人判断で摂取すると嘔吐や下痢、胃腸炎を引き起こすことがあります。
服用する場合は自分では判断せず、必ず専門の医師の指示に従ってください。