花の形や花言葉がとても特徴的な山野草、ツリフネソウの育て方を解説しているページです。
ツリフネソウを上手に育てるポイントについて解説しています。
ツリフネソウの特徴
ツリフネソウ(釣船草)は北海道から九州に分布する一年草です。
ツリフネソウという花はあまりメジャーではなく、園芸ファンの間でしか知られていません。しかし、同じツリフネソウ科ツリフネソウ属にはホウセンカがあり、こちらはよく知られています。
ツリフネソウの花言葉のひとつに「私に触らないで」というのがありますが、これはホウセンカと共通しています。熟した果実に触れると弾けて種子が飛び散るという特徴が同じだからです。
ツリフネソウの名称は花の形が舟を釣り下げているように見えるとか、釣船と呼ばれる花器に似ているところに由来しています。
また、根には解毒作用があり薬草として使われ事もあるそうですが、有毒植物なので素人判断での利用はお控え下さい。
基本データ
難易度 | 易しい |
流通名 | ツリフネソウ、ムラサキツリフネ |
成長速度 | 普通 |
花・種 | 開花時期は山地で8月ごろ、平地は9~10月。花色は紫や桃、まれに白もある。果実は1~2cmの紡錘形で、熟すと少し触れただけで弾けて種子が飛び散る。種は4㎜ほどと小さく、褐色の楕円形をしている |
日照量 | 半日陰 |
温度 | 耐寒性、耐暑性とも普通 |
湿度 | やや湿ったところに多く、湿潤を好む |
花言葉 | 私に触らないでください、期待、詩的な愛、安楽 |
ツリフネソウが好む環境
日当たりと植えるのに適した場所
北海道から本州、四国、九州と全国に分布し、湿気の高い薄暗い場所に自生しています。したがって、半日陰で育てるのが基本で、直射日光に当てすぎると葉焼けしてしまいます。ただし、あまり暗いと徒長しますから、春の芽出し時期はできるだけ日光に当てた方がいいでしょう。
もうひとつ注意したいのが湿気です。川の近くや湿地帯など空中湿度の高い環境を好みます。湿り気に関しては鉢植えならある程度は調整ができるでしょう。しかし、地植えではそうはいきません。落葉樹の下で、できれば周囲に苔を植えて水を撒いておくと湿度が確保できます。
温度・湿度
日本全土で自生していることからわかるように、ツリフネソウは日本の風土にマッチしています。そのため、耐暑性、耐寒性とも気を遣う必要はなく、夏だから、冬だからという理由で特別な管理をすることはありません。
ただ、強い日光に当てず半日陰で栽培していれば大丈夫です。もっとも、あまり日陰だと花つきが悪くなります。適度な木漏れ日(または遮光率)を確保してください。湿度の維持も大切です。決して水切れしないようにします。
用土
水はけがよく、それでいて保湿性の高い用土が望まれます。市販されている野菜用や花の土でも十分ですが、自分でブレンドするなら赤玉土をメインにして腐葉土を混ぜてください。水はけをよくしようとして砂系の用土を用いると、水やりの回数が増えて余計な手間をかけることになります。
また、ツリフネソウ科の植物は連作障害しやすいという特徴がありますから、植え替えする場合は必ず新しい土を利用してください。地植えでは植えつけ箇所を変えるか、または深く掘り返して腐葉土をたっぷり混ぜましょう。
ツリフネソウを上手に育てるコツ
水やり
ツリフネソウは乾燥に弱い植物です。決して水切れさせないように、用土の表面が乾いたらたっぷり与えてください。特に、猛暑が続く真夏は蒸発が早く、一度でも水切れさせるとその後の生育に大きく影響します。
乾燥させないコツは早めに水やりをすることです。表面が完全に乾く前に与えるように心がけます。また、可能なら1日に2~3回水やりをしましょう。といって、鉢内が常に水で満たされていると根腐れしてしまいます。用土の選定に気を配り、表面を観察することが大切です。
肥料の与え方
ツリフネソウに肥料はそれほど必要ありません。しかし、花や実をより多く付けさせようとすればやはり施肥した方が有利です。
まずは植え付け・植え替え時の元肥を施しておきます。緩効性の化成肥料を鉢底に埋め込みます。春~夏の生育期は同じ緩効性の化成肥料を置き肥します。また、夏~秋の開花期は液肥を週に1度、または2週に1度施肥します。
最後が花後のお礼肥えで、充実した実・種子を成らせるなら欠かせないものです。これも化成肥料を使用します。
冬越し
ツリフネソウは1年草で、秋に実が成って種子が弾けると一生を終えます。したがって、冬季は種の状態で過ごし、特別の管理は不要です。
ただ、条件によっては同じ株から再び芽が出ることがあります。根まで枯れず、翌春に芽を出すことが多いエリアでは鉢内が凍ってしまわないように管理します。具体的には雪が積もらず、霜が下りない場所に移動させます。
地植えでは落ち葉や腐葉土を株に被せておきましょう。また、完全には乾かしてしまわないようにときどき水やりをします。
ツリフネソウの選び方
9㎝のポリポットに植えられた苗が出回るのは春~夏です。これから花を楽しもうとする愛好家に合わせたものですから、花芽の数はもちろん、しっかりした茎、健康そうな葉など見るべきところは多々あります。虫食い跡や黄変の見られない株を選んでください。
ツリフネソウの増やし方
一年草ですから種による実生により株を増やします。もっとも、弾けると種子はそこら中に飛び散りますから、確実に採取しようとすればお茶のパックや手作りの紙袋などを被せておきます。
原則は取り蒔きですが、保存したい場合は乾燥剤と一緒に密閉容器に入れておきましょう(発芽率は落ちるようです)。地植えだと飛び散った種子が勝手に芽を出しますから、増やそうと思わなくても環境に恵まれればどんどん増えていきます。
鉢植えでもある程度は勝手に増えます。ぜひ挑戦してみてください。
ツリフネソウの植え替え
ツリフネソウは一年草なので植え替える必要はありません。そこで、種を蒔いて苗にするまでの手順を解説しておきましょう。
多くの植物は苗床に種を蒔くのですが、ツリフネソウの仲間は直接鉢に、または庭に蒔いてそのまま育てます。理由は、直根性のためです。根が真下に伸びるのです。植え替えることによって根が傷つくと素直に成長せず、花が咲かない可能性もあるためです。
蒔きどきは春の4~5月ごろです。用土の表面に蒔いたら種が隠れる程度に土をかけ、たっぷり水やりします。発芽後は早めに間引きします。ある程度成長して間引くとほかの株の根がダメージを受ける可能性があります。
病気・害虫
葉が白い粉に覆われたようになるのがうどん粉病です。土や枯れ葉に生息しているカビが風や泥はねのせいで葉に飛び移って感染します。
風通しが悪いとかかりやすいので密植を避け、密集していれば葉も間引いてください。初期の段階なら重曹や食酢を薄めてスプレーすると症状を抑えることができます。
害虫で注意したいのがネコブセンチュウです。これは根に寄生する害虫で目に見えないほど小さく、肉眼では発見できません。
成長が悪い株を掘り起こすと根にコブができており、その部分にセンチュウ(線虫)が寄生していることがわかります。一旦寄生されるとその株は救われず、処分するしかありません。センチュウを殺す物質を分泌するマリーゴールドを周囲に植えておくと予防できます。
毒性や危険性について
ツリフネソウは根や茎、葉にヘリナル酸という有毒成分が含まれていて口の中に入れると強い苦みを感じます。決して食べたりはしないでください。