湿地を好む野生の欄、トキソウの育て方をまとめているページです。
トキソウは日本に自生する山野草ですが湿地の減少や盗掘などにより準絶滅危惧の指定を受けている植物です。ですので育てる場合は流通している栽培株を購入する事になります。
下記ではトキソウを育てる際のポイントについて解説しています。
トキソウの特徴
トキソウを漢字にすると朱鷺草。
朱鷺とは日本を象徴する鳥として知られていますが、2019年度は600羽ほどしか確認されていません。その貴重な鳥の名を拝命するようになった理由は花の色がトキ色だからです。(トキ色→■)
黄色がかった淡く優しい桃色で、その色の名称は江戸時代から伝わっています。当時はトキがその辺りにいくらでもいたのでしょう。しかし、現在ではトキもトキソウも非常に少なくなっています。
トキソウは湿地を好む植物なのですが、相次ぐ開発によって湿地帯はどんどんその面積を減らしているというのが現状です。また、盗掘によって株は激減し、リッドリストの準絶滅危惧種に指定されました。
その一方、台湾や中国で産出されたトキソウがあり、こちらは花が大きいことから大輪トキソウの名で流通しています。
基本データ
難易度 | 普通 |
流通名 | 朱鷺蘭(ときらん)、日本トキソウ |
成長速度 | 普通 |
花・種 | 開花時期は5~7月で、15~30㎝に伸びた茎の先端に桃紫色の花を1輪咲かせる。最近は白花種も見られる。花後、種子ができることもあるものの、ラン科の常として通常の蒔き方では発芽しない |
日照量 | 日なた~半日陰 |
温度 | 耐暑性はやや弱い。耐寒性は強い |
湿度 | 湿気を好む |
花言葉 | 控えめ、幻の愛、届けたい想い、献身 |
トキソウが好む環境
日当たりと植えるのに適した場所
トキソウは湿原に自生しています。湿原とは高い樹木のないジメジメした草原です。そのため日陰はなく、一日中日光を浴びて生活しています。
東洋ランはおおむね半日陰を好むものですが、トキソウは例外だと思ってください。日陰で栽培すると徒長します。夏場でも少しばかり葉焼けするよりは日当たりを優先した方が株はよく育つし、花弁の桃紫色もより濃く発色します。
もっとも、花が咲いてからは午前中だけ日光に当て、午後は日陰に移動させると開花期が長くなるという傾向があるようです。
また、ツボミが色づいたら水やり時に濡らさないようにします。雨も同様で、降雨が予想されるときは軒下などに移してください。
温度・湿度
トキソウは北海道から本州の北部に自生しています。その分布から寒冷地を好むことがわかるでしょう。
高度についてはこだわりがないようで、海岸近くの湿地帯から標高の高い湿原にまで生活しています。したがって、四国や九州で栽培するのは難しく、特に夏越しは厳しいと判断して構いません。
もちろん、湿地帯に自生する植物ですから乾燥には弱いと思ってください。ただし、北日本でも真夏には鉢内が蒸れることがままあります。そのような場合は50%程度遮光した方が賢明です。
用土
洋ランの植物には水ゴケを愛用する栽培家が多く見られます。東洋ランであるトキソウも水ゴケで十分育てることは可能です。水ゴケはどこの販売店でも手に入りますし、水持ちがいいため鉢内の水管理も気を遣う必要がなく、育てやすい用土であるのは間違いありません。
ただ、劣化が早く、また根の間に入った水ゴケは取り除くのが面倒で手間がかかります。その点、鹿沼土は落としやすく、株分けも楽なのですが、乾きやすいという特徴があります。
それだけ水やりに気を遣わなければならないという問題があるということです。そのため、小粒の鹿沼土に水ゴケを30%程度混ぜて使用する人が増えています。
トキソウを上手に育てるコツ
水やり
決して乾かさないこと。これがトキソウを栽培するための最優先事項で、常に用土が湿り気を帯びているように管理しなければなりません。
気温が上がると乾きやすくなりますから、水切れを防ぐため腰水というやり方で鉢底から吸水させる方法があり、たくさんの愛好家から支持されています。もっとも、管理は楽になりますが、水をこまめに交換して傷まないようにするという手間が欠かせません。
秋になって葉が落ち、休眠期に入っても乾燥させると枯死しますから、水やりを忘れないようにしてください。
肥料の与え方
トキソウは肥料を好む植物なので、成長期の春と秋には1週間置きに液肥を施しましょう。肥料が切れると株が大きく育たず、花つきが悪くなります。
月に1回程度緩効性の化成肥料を置き肥すると効果が見込めるものの、水ゴケを使用しているとその部分が早く傷むという問題が生じるのです。水ゴケが傷んでも無視できるのなら置き肥を使ったほうがいいでしょう。それは植え替え時の元肥も同様です。
冬季の休眠期間中は肥料を与える必要はありません。
冬越し
秋の終わりころには葉が枯れ落ち、トキソウは休眠期に入ります。寒さには強い植物ですから特に冬越しの処置は必要ありません。
ただし、寒さが厳しい地域は鉢内が凍結することが珍しくなく、そして凍ったり解けたりが繰り返されると根は大きなダメージを受けます。それを防ぐには軒下に移動するか、スペースに余裕があれば室内に取り込んでもいいでしょう。
もっとも、最近は鉢カバーやミニ温室などの防寒用品が新しく開発されています。それらの利用も検討してみてください。
トキソウの選び方
7.5~9㎝ポットに苗を植えた状態で販売されることが多いトキソウですが、選択する際はまずは葉の状態を見てください。虫に食われてないか、病気や葉焼けで色が変わってないかをチェックして、できるだけ健康で丈夫に育っているものを選びます。
トキソウの増やし方
多年草は植え替え時の株分けというケースが多いのですが、トキソウの場合は一般的に見られる株分けとは少しばかり様相が違います。
トキソウの根茎は連なっていて、植え替えの適期である2~3月になるとその根茎の各所から花芽と葉芽が出てきますから、3~5芽がついた状態で根茎を分けます。
葉芽は細く、花芽はふっくらしていますから見ればすぐ分かるでしょう。その言葉のように花芽からは花が咲き、葉芽からは葉が育ちます。花が咲かないからといって葉芽をないがしろにしてはいけません。翌年にはしっかり花が咲きますから大切に育ててください。
トキソウの植え替え
トキソウは用土の中で根茎を伸ばし、次々と新しい芽を付けていきます。2年も経つと鉢内は根がびっしりと回っていますから、2年に1回は植え替えをしなければなりません。
時期は2~3月中旬が適当でしょう。これ以上遅らせると発芽が先伸ばしにされ、開花する率がぐんと落ちてしまいます。
4号の平鉢を使います
使用する鉢は深いものよりも平鉢の方が通気性はよく、鉢底にはゴロ土を敷いて水はけをよくします。サイズは4号(12㎝径)がお勧めです。トキソウの草丈は15㎝前後で、ひとつの鉢に10~12株を植え付けると花のサイズのバランスもよく、ファンは等しくこのような植え方をしています。
大ざっぱに手で分ける
古い鉢から抜いたらあまりほぐさず、大ざっぱに分けて新しい鉢に広げて用土を上から被せます。水ゴケ使用時は傷んでいる可能性が高く、その場合はていねいにほぐして水ゴケをすべて落として新しいものを根の隙間に詰めてください。
水ゴケが緩くフワフワの状態だと株の安定が悪くなりますから、芽を傷めない程度できつめに詰めていきます。深さは鉢の縁よりも芽の位置が少し低いぐらいでいいでしょう。
病気・害虫
病気も害虫も被害の少ない植物です。
ただ、たまに炭そ病やウイルス病、白絹病が発生することがあります。炭そ病も白絹病も高温多湿期に発生しやすいため、高温時の蒸れを極力防いでください。
害虫はアブラムシ、ヨトウムシ、ナメクジなどに注意します。ウイルス病はアブラムシが媒介する病気ですから、花や葉が出る時期は念入りにチェックしましょう。