破れた傘のような特徴的な姿を楽しむ山野草、ヤブレガサの育て方をまとめているページです。
ヤブレガサは自生している他にも斑入り種などもあり葉を楽しむ場合はそちらもおすすめです。また、ヤブレガサは山菜としても食べられる植物です。
下記ではヤブレガサを上手に育てるポイントについて解説しています。
ヤブレガサの特徴
ヤブレガサは日本に自生するキク科ヤブレガサ属の多年草です。
破れ傘と聞いてみなさんはどのようなイメージを抱きますか?1970年代に放映されたTVドラマ「破れ傘刀舟」を思い浮かべた人がいるかもしれません。蘭学医にして剣の達人である主人公が活躍するシーンに喝采を送った人も少なくないでしょう。
常に破れた傘を持ち歩き、また彼の破天荒な生き方を表したのが破れ傘なのですが、植物のヤブレカサは雨に濡れた傘を思い起こさせ、日本人の美意識に訴えて根強い人気があります。
芽が出て間もない時期の若葉は、専門用語では掌状深裂と呼ばれる深い切り込みが入っています。しかも開き切ってない状態は傘をすぼめた形に見えることから命名されました。
この段階の葉や茎は山菜として食用に供され、天ぷら、またはおひたしにしてよく食べられます。また、夏に根を採取して乾燥させ、煎じると風邪に薬効があるといわれているようです。
基本データ
難易度 | 易しい |
流通名 | ヤブレガサ |
成長速度 | 普通 |
花・種 | 花が咲くのは7~10月で、花色は白。品種によっては紅紫の花を咲かせる。花後に綿毛が形成され、その付け根に種子が実る。晩秋に採取後、冷蔵庫で保管する |
日照量 | 半日陰を好む |
温度 | 耐寒性はやや強い、耐暑性とも強い |
湿度 | 湿気を好む |
花言葉 | 透き通る心、初恋、復縁 |
ヤブレガサが好む環境
日当たりと植えるのに適した場所
ヤブレガサは北海道を除く日本全域に分布し、落葉性の林の下の斜面に生育しています。
林の下というのは半日陰を意味します。また、斜面というのは水はけがよく、水が停滞しないところを好むと解釈できます。
芽出しして若葉が展開するまではよく日に当てますが、この植物は1年に1度しか葉を出しません。そのため、葉は極力大切にします。夏の強い日射は大敵ですから50%以上の遮光を心がけます。斑入り品種はさらに暗くした方がいいかもしれません。
地植えの場合も落葉広葉樹の下が適しています。15cmほどの畦を作り、そこに植えると水はけを確保できます。
温度・湿度
ヤブレガサは日本固有の植物なので気候や風土が合っており、管理が楽で初心者でも非常に育てやすいといえます。夏は高温より葉焼けにだけ注意すればよく、遮光できていれば問題はありません。
地植えでは1年中放任しても元気に育ってくれます。また、地上部が活動している間は十分な湿気が必要です。
ただし、よく似たモミジガサは空中湿度の高いところを好みますが、ヤブレガサはそれほどではありません。過湿には注意してください。
用土
水はけがよければ特に用土は選びません。市販の山野草用培養土でもいいし、単なる草花用培養土なら赤玉土を30%混ぜれば十分です。
自分でミックスしたいベテランなら小粒の赤玉土に腐葉土を少し混ぜます。水はけが悪いと根腐れしますから、その対策を優先したいようなら鹿沼土、軽石、桐生砂の等量混合を使えばいいでしょう。
もっとも、水はけを優先すると乾燥しやすくなります。夏はこまめに水やりするか、または二重鉢にして補います。
ヤブレガサを上手に育てるコツ
水やり
地上部がある間の春~秋は用土の表面が乾いたら十分に与えます。十分というのは鉢底からたっぷり流れ出るくらいになります。
これにはふたつの意味があります。表土から底まで十分な水が通り抜けると鉢内の空気も押し出され、上から新しい空気が吸い込まれます。こうすることで空気が循環されます。もうひとつは、用土の詰まり具合が判断できるという点です。
植え替えたばかりならその心配は不要ですが、2~3年すると根が張り、用土も古くなって水の抜け具合が悪くなります。鉢底からスムーズに水が出てこなくなったら植え替え候補としてチェックしておきましょう。
冬の休眠期は完全に乾燥しない程度に水やりします。
肥料の与え方
休眠期は施肥する必要はありませんが、芽出しから葉が枯れるまではそれなりの肥料を与えてください。
植え替え・植えつけ時は元肥としてリン酸、カリウムが主体の緩効性化成肥料をすき込んでおきます。4~5号鉢でひとつまみ程度です。芽出しからは液肥を2週間に1回程度、水やり代わりに施します。葉が展開するまではチッ素主体、それ以降はリン酸、カリウム中心がいいでしょう。
真夏は肥料を与える必要はないのですが、液肥を十分薄めた(3000倍程度)ものを施肥してもいいでしょう。地植えも同様です。
冬越し
地上部はありませんから茎・葉が傷むことはなく、ある程度の寒さには耐えられるのですが、気温が0度を下回るエリアでは鉢内が凍る可能性があり、それなりの対策が欠かせません。
方法としては、地植えでは腐葉土や敷きワラでマルチングします。鉢植えでは軒下に移動しますが、夜間まで水分が残っていると凍る可能性がありますから午前中に水やりをします。
屋内に移せばその心配は不要なのですが、暖かすぎるのは禁物です。倉庫や納屋があれば理想的ですが、現代の住宅環境ではなかなかそこまでは望めないでしょう。
ヤブレガサの選び方
ポット苗が出回るのは春の芽出し時期が大半です。ただ、大半の業者はそれまで地植えしていますから、ポットの中では十分根が張ってないと思った方がいいでしょう。
もっとも、健康な株はそれから成長しますから、株元がしっかりしていないからといって心配する必要はまずありません。ただ、葉を観察してハモグリバエの被害がないかを確認しておきましょう。
ヤブレガサの増やし方
株分け、根伏せ、実生と三通りの方法があります。株分け、根伏せは植え替えしたときに行います。
掘り上げた株の古くて傷んだ根を整理すると意識しなくてもいくつかの株に分かれますから、それを新しい鉢に植えつけます。根伏せは太い根を利用します。付け根から切り取り、5㎝程度の長さを1㎝ほどの深さで埋めます。
時期にもよりますが、発芽するまで2~3か月は要します。実生は秋に採取した種を冷蔵庫に入れておき、2月に蒔きます。冷蔵庫に保管するのは湿らせて低温状態にしておくためで、こうすると発芽率が高くなるのです。
ヤブレガサの植え替え
長い地下茎を横に延ばす性質があり、それほど根は張りませんから植え替えは2~3年に1度で十分です。時期としては1~2月の休眠中がおすすめです。
鉢は4~5号鉢を
破れ傘のような若葉を鑑賞したいのなら小さな浅鉢に寄せ植えをすると和風の雰囲気を味わえますが、花茎が延びるとそれではバランスが悪くなります。やや深めの4~5号鉢に移すか、最初からこのサイズを利用して2~3株植えつけます。
古い土は洗い落とす
掘り上げた株は根を傷めないように古土を洗い落とします。そのとき、枯れた根は切り捨ててください。株分けや根伏せはこの時点で行います。地下茎はできるだけ 浅く用土に埋めます。
病気・害虫
ヤブレガサはごくたまにうどん粉病の被害に遭うことがありますが、病気はほとんど気にする必要はありません。
害虫はアブラムシ、ヨトウムシ、コナガがよく発生しますから、見つけ次第捕殺します。
注意してほしいのはハモグリバエです。ハエが葉の組織内に卵を産みつけ、その幼虫が葉を食い荒らし、まるでモグラのように移動します。葉の表面にはその跡が白く残るためエカキムシとも呼ばれています。幼虫を押しつぶすか葉ごとつみ取ります。梅雨時期から初秋によく発生します。
ヤブレガサの食べ方
春先に出た新芽の柔らかい部分は食用可能です。ヤブレガサは天ぷらで食べるのが最も簡単な調理法ですが、アク抜きをすればお浸しでも食べられます。
ヤブレガサの採取時に汁が手につくと黒くなり取れにくいので、手袋等をしておくとよいでしょう。