ウチワサボテンは観賞用だけでなく食用としても育てられるサボテンの仲間です。野菜やフルーツとしての利用は日本ではまだ馴染みが薄いですが、ウチワサボテンは古くから観賞用として楽しまれてきました。
このページでは観賞用のウチワサボテンを育てるポイントについて解説しています。
ウチワサボテンの特徴
ウチワサボテンは南米や北米、タイ、イスラエルなどを原産とするサボテン科ウチワサボテン亜科、オプンティア属に分類される植物です。
世界に約300種が存在し、一部の品種は日本でも古くから栽培されています。サボテンの中でも丈夫な植物なので、民家の軒先や庭に植えられていることも多いです。
平たい楕円形の肉厚な茎を持つのが特徴で、うちわの形に似ていることから「ウチワサボテン」と名付けられています。茎をいくつか連ねるとうさぎのような姿になり、かわいらしい株に育ちます。
黄色の細かいとげを持つ「金烏帽子」や、白いとげがドット模様に見える「白桃扇」、平たく大きな茎を連ねる「大丸盆」などが代表的な品種です。
ウチワサボテンの中には実や茎が食用として出回っている品種もあります。
基本データ
難易度 | やや易しい |
流通名 | ウチワサボテン、バニーカクタス |
成長速度 | やや速い |
花・種 | 開花年齢に達すると黄色やオレンジの花が咲きます |
日照量 | 日当たりを好みますが真夏の直射日光は避けます |
温度 | 寒さにはやや弱いので冬は5℃以上を保ちましょう |
湿度 | 多湿を嫌うため真夏は水やりの回数を減らします |
花言葉 | 熱愛、枯れない愛、偉大 |
ウチワサボテンが好む環境
日当たりと置き場所
ウチワサボテンは生命力があるため強い日差しにも耐えますが、葉焼けを防止するため真夏の直射日光は避けるようにします。
屋内で育てる場合
ウチワサボテンは日によく当たったほうが丈夫な株に育つので、屋内で管理する場合はしっかりと日光が当たる場所に置いてください。
時折ベランダなどの戸外に出して太陽の光を当てるとよいでしょう。日照不足になると茎が間延びしてきれいな楕円形にならないことがあります。
冬は室温が5℃を下回らないように管理しますが、花を咲かせたい場合はある程度の寒さが必要なので涼しい部屋に置くようにします。
屋外で育てる場合
ウチワサボテンは日光が大好きな植物なので、春から秋にかけての生育期には日当たりと風通しのよい日向で管理してください。
ただし、強い日差しを浴び続けると葉焼けを起こす可能性があります。真夏は直射日光を避け、軒下などの半日陰に移しましょう。
寒さにはやや弱いため、気温が5℃を下回ってきたら室内へ移して管理します。
温度・湿度
ウチワサボテンは寒さにやや弱いものの耐暑性は強い植物です。
ただし、日本の夏は砂漠とは違い夜も気温が高いことが多いため、ずっと日向に置いていると株が弱ることがあります。真夏は風通しのよい半日陰に移動させるのが無難です。
気温が5℃以下になる日が続くと茎や根が凍傷を起こし、腐ったように枯れてしまいます。冬になったら室内に取り込むようにしましょう。
ウチワサボテンは乾燥地帯に自生しているため湿度の高い環境を嫌います。根腐れを防止するためにも土の水はけは常によくしておきます。
用土
ウチワサボテンは多湿な環境を苦手とする植物です。土が常に湿った状態になると根腐れを起こしてしまうので、用土には通気性と水はけのよい土を使用してください。
自作する場合は、赤玉土(小粒)6:腐葉土2:川砂2の割合でブレンドした土か、川砂8:腐葉土2で作った土に燻炭を1割ほど混ぜたものを使うのがおすすめです。
初心者であれば、園芸店などで販売されているサボテン専用の土を使用するのが最も簡単です。
ウチワサボテンを上手に育てるコツ
水やり
ウチワサボテンの水やりは季節によって量やタイミングを変える必要があります。
春から秋にかけての生育期には土の表面が乾いて白っぽくなってからたっぷりと水を与えます。鉢の底から水が流れ出るくらいの量が目安です。
夏の期間は日中に水やりをすると葉や根が蒸れやすくなるため、夕方以降の涼しい時間帯に与えましょう。
冬はウチワサボテンが休眠期に入るため、水やりは月に1度の頻度まで減らします。土が乾いてからしばらく水を与えなくても問題ありません。寒い時期に乾燥気味の状態を保つと耐寒性が強まります。
葉水
ウチワサボテンのようなサボテン科の植物は葉や茎に水分を蓄えているため、定期的な葉水は不要です。
ただし、水やりの頻度を減らす冬の時期や、室内の冷暖房による茎の乾燥が気になった時は、霧吹きなどで水を吹きかけてもよいでしょう。
茎がしわしわになっている状態が葉水後2~3日経っても改善しない場合、水が不足しているのではなく根腐れを起こしている可能性が高いです。その際は傷んだ根の処分と植え替えが必要です。
肥料の与え方
ウチワサボテンはもともと栄養分の少ない痩せた土地に生息しているので、肥料を与えなくてもよく育ちます。
肥料を与える場合は、緩効性の固形肥料もしくは鶏糞、油かすなどの有機肥料を、植え替え時または植え付け時に少し混ぜておくだけで十分です。
肥料の量が多いと茎が徒長して見た目が悪くなるほか、根が傷んで枯れてしまうこともあります。肥料の与えすぎには注意してください。
暑さで株が弱りやすい夏の時期と、ウチワサボテンの休眠期となる冬場は、栄養過多となるので肥料は与えません。
冬越し
ウチワサボテンは寒さにあまり強くないため、気温が低くなる冬場は室内へ取り込んで管理します。
日照不足になるとひょろひょろとした株になるため、なるべく南向きの日光がよく当たる部屋に置いてください。日当たりのよい窓際などがおすすめですが、5℃以下になる場所は避けましょう。
冬場はウチワサボテンが休眠期に入るため水をほとんど必要としません。水やりは月に1度くらいに抑えてやや乾燥気味に管理すると、丈夫な株に育ちます。
ウチワサボテンの選び方
ウチワサボテンを購入する際には害虫が付いていないか必ず確認してください。害虫が付着したものを買ってしまうと株が傷んでしまったり他の植物に被害が及んだりする可能性があります。
茎がきれいな楕円形をしていて徒長しておらず、しわしわになっていない株を選びましょう。
ウチワサボテンの増やし方
ウチワサボテンは繁殖力が強いため挿し木によって簡単に増やすことができます。
まずは株から平たい茎を1枚切り取り、風通しのよい日陰に7~10日置いて切り口を乾燥させましょう。茎の切り口が乾いたら新しい用土を入れた鉢に挿し込みます。
挿し木後は発根するまで水を与えないようにし、根が十分に生えてきたら通常通りの管理に戻します。
切り取った茎の切り口を乾かしてからすぐ土に植え付けるのではなく、そのまま2週間~1か月ほど置いておき、根がでてきたら用土に挿し込むという方法もあります。
挿し木の他にもタネを蒔いて増やす実生というやり方もありますが、成長するまで時間と手間がかかるため、初心者の場合は挿し木で増やすことをおすすめします。
ウチワサボテンの挿し木は生育期である4月から8月頃が適しています。
ウチワサボテンの植え替え
ウチワサボテンを成長するままに放っておくと、根が鉢内に広がって根詰まりを起こします。根詰まりは根腐れの原因となるため、1~3年に1度を目安に植え替えをおこないます。
水を与えても葉がしわしわの状態が続くような場合も、根が詰まって根腐れを起こしているかもしれません。根の状態を確認するためにも植え替えをおこなうとよいでしょう。
ウチワサボテンの植え替えは以下の手順でおこないます。
- 数日前から水を控えて土を乾燥させておく
- 回り大きな鉢に鉢底ネットと鉢底石を敷く
- 清潔な土を鉢の1/3程度まで入れる
- 鉢から株を抜き出し、根についた土を揉み落とす
- 鉢の中央へ株を置いて周りに土を入れる
- 半日陰で管理し1週間~10日後に水を与える
株を鉢から抜いた際、根は2~5cmに切り詰め、傷んだり腐ったりしている根があれば取り除きます。
ウチワサボテンの植え替えは3月~7月下旬、9月~11月頃が適期です。
病気・害虫
ウチワサボテンは病気にかかりづらい植物ですが、まれに「軟腐病」にかかることがあります。
軟腐病は植物に細菌が入り込むことにより葉が腐ってしまう病気です。梅雨などの高温多湿な環境の下で発生しやすいため、用土の通気性と水はけは常によくしておきます。
発症した箇所は元に戻らないため、発見したら速やかに取り除いてください。枯れた茎を見つけたら腐る前にこまめに取り除き、軟腐病の発症を防ぎましょう。
ウチワサボテンにつきやすい害虫にはカイガラムシやアブラムシがいます。
これらの害虫は茎に付着して栄養分を吸い取り、株を弱らせてしまいます。発生したらすぐに粘着テープなどで取り除くか、殺虫剤を使って駆除しましょう。
ただし、カイガラムシの成虫には薬剤が効きづらいため歯ブラシなどでこすり落とします。