甘く力強い香りの花を咲かせる金木犀(キンモクセイ)の育て方をまとめているページです。
キンモクセイは香りがとても良いため庭先に植えている家庭も多く、春の沈丁花、夏のクチナシ、秋のキンモクセイは三大香木(さんだいこうぼく)とも呼ばれています。
本ページではキンモクセイを上手に育てるポイントをご紹介しています。
キンモクセイの特徴
キンモクセイは、中国を原産とするモクセイ科モクセイ属に分類される常緑性の高木です。
9月下旬から10月中旬にかけて強い芳香を持つ橙黄色の小さな花を密に咲かせます。特に夜間になると、遠くにいても香りが感じられるほど強く香ります。古くは「千里香」と呼ばれることもありました。
ジンチョウゲ、クチナシと並ぶ「三香木」のひとつとして知られ、公園樹、生け垣、鉢植えなど、さまざまな場面で目にします。枝いっぱいに咲く小花は日差しを受けると名称の通り金色に輝き、秋の風物詩となっています。
キンモクセイは食用にもなり、原産地である中国では花を砂糖漬けにしたり、リキュールにしたりします。日本の鹿児島ではキンモクセイの葉をお茶にして楽しんでいます。
基本データ
難易度 | やや易しい |
流通名 | キンモクセイ |
成長速度 | やや速い |
花・種 | 9月下旬から10月中旬にかけて開花します |
日照量 | 耐陰性がありますが日当たりのよい場所を好みます |
温度 | 暑さには耐えますが寒さにはやや弱い植物です |
湿度 | 乾燥を苦手とするため水切れに注意しましょう |
花言葉 | 謙遜、気高い人、真実、誘惑、陶酔 |
キンモクセイが好む環境
日当たりと植えるのに適した場所
キンモクセイは耐陰性があり日陰でも育ちますが、日光に当てた方が元気に育ち、花付きもよくなります。日当たりと風通しのよい場所を選んで植えましょう。
また、排気ガスが多いなど大気が汚れた場所では花が咲きづらいため注意します。
暖かい気候を好み、寒さにはやや弱いため、雪や霜が当たるような寒冷地では生育が悪くなる傾向があります。冬に冷たい風に当たらない場所に植えてください。一般的に、地植えに向く地域は東北以南となります。
植え付ける土壌には、やや湿り気があり肥よくな水はけのよい土が適しています。砂質分に粘土質が3割ほど混ざった土がよいでしょう。乾燥しやすい夏場は土が乾いて水切れを起こさないよう気をつけます。
キンモクセイの花はとても小さく枝に密生するため、咲き終わると花柄がたくさん落ちます。掃除をしやすい場所に植えると管理しやすいでしょう。
温度・湿度
キンモクセイは暖地を好む反面、寒さにはやや弱い植物です。
冬に霜や雪が当たると生育が悪くなることがあるため、なるべく寒風が防げる場所で栽培します。キンモクセイは生育が旺盛なので定期的に剪定をおこないますが、厳寒期は株が傷みやすいため避けましょう。
暑さには比較的強いですが、乾燥には弱く、やや湿り気のある土壌を好みます。夏は土が乾きやすくなるため、水切れを起こさないようこまめに水やりをします。土が乾燥すると花がつきにくくなります。
用土
キンモクセイは乾燥に弱く湿り気のある土壌を好みます。ただし、土が常に湿った状態になると根腐れを起こしてしまうため、植え付ける用土には水はけのよい土を使用します。
鉢植えの場合、赤玉土(小粒)7:腐葉土3などの割合でブレンドした土を使います。園芸店などで販売されている草花用培養土でもかまいません。
地植えの場合は、あらかじめ堆肥や鶏糞をすき込んで有機質の土壌を作ります。砂質分に粘土質を3割ほど混ぜた土がおすすめです。
キンモクセイを上手に育てるコツ
水やり
鉢植えのキンモクセイには、土の表面が乾いてきたらたっぷりと水を与えます。鉢底から水が流れ出るくらいの量が目安ですが、根腐れを防ぐため受け皿に溜まった水はすぐに捨ててください。
地植えの場合は、基本的に降雨に任せましょう。植え付けの直後や、暑い夏に晴天が続くなど極度に乾燥しているときのみ水を与えます。
土壌が乾燥すると生育や花付きが悪くなるため注意しますが、冬は土が乾燥しづらいため水やりの頻度を減らしてください。
肥料の与え方
キンモクセイの苗を植え付ける際、元肥として堆肥や鶏糞などの有機肥料を施します。その後、鉢植え・地植えともに、2月下旬から3月にかけて、寒肥として有機質肥料を施します。
寒肥とは、寒い時期に与える肥料のことです。寒い時期には成長しませんが、寒肥は冬の間に土の中で吸収されやすい形に変化し、春以降の生育に効いてきます。
新芽が伸び始める4~5月頃には、追肥としてリン酸やカリウム分を多く含む肥料を与えます。開花前の8~9月には少量の花肥を施すと花付きがよくなります。
冬越し
キンモクセイは寒さにあまり強くありません。一般的には東北以南での地植えが可能だといわれ、氷点下が続く寒冷地では戸外での冬越しは難しくなります。
寒い地域で栽培する場合はなるべく地植えにはせず、移動が可能な鉢植えで育てる方がよいでしょう。霜や雪が当たらないよう、冬の間は寒風が当たらない場所で管理します。
春以降の生育をよくするため、2月下旬~3月にかけて有機質肥料を寒肥として与えます。気温が低いと土壌が乾きにくいので、冬は水やりの頻度を減らしましょう。
キンモクセイの選び方
キンモクセイの苗木を購入する際は、葉色が濃く幹が太いものを選びます。
若い苗は葉を充実させるためにエネルギーを使うためあまり花が咲きません。花をすぐに楽しみたい場合は、幹の太さが直径1.5cm以上の苗木を購入しましょう。
キンモクセイの増やし方
キンモクセイは雌雄異株で、日本に存在するのは強く香る雄株のみなので種ができません。そのため、挿し木による増やし方が一般的です。
挿し木をする場合は、まず5月下旬~7月頃の成長中の枝を選んで10~15cmほどの長さに切り取ります。土に埋まる下の方の葉を取り除き、上葉を4~5枚残します。発根の方にエネルギーを回すため、葉が大きい場合は半分ほどに切りましょう。
挿し穂の切り口を斜めにカットし、2時間ほど水に浸して吸水させます。発根促進剤を切り口に薄くまぶし、あらかじめ湿らせておいた赤玉土などの挿し木用の土に挿し込みます。
枝を挿す際は、割り箸などで挿し穴を開け、挿し穂の1/3~1/2ほどを埋めましょう。まわりの土を押さえて安定させてください。
挿し木後は直射日光を避け、高い湿度を保てる場所で管理します。鉢ごとガーデニング用のビニールシートで覆うと発根率が上がります。根が出るまで土を乾燥させないようにしてください。
キンモクセイの植え替え
鉢植えのキンモクセイは成長が速く、長年同じ鉢で育て続けていると鉢中に根が回り根詰まりを起こします。根詰まりは根腐れの原因にもなるため、2~3年に1度を目安に一回り大きな鉢へ植え替えましょう。
鉢の底から根が出てきたり水の吸収が悪くなったりした時も植え替えのタイミングです。
キンモクセイの植え替えの手順は以下の通りです。
- 1回り大きな鉢に鉢底ネットと鉢底石を敷く
- 清潔な用土を鉢の1/3程度まで入れる
- 鉢から株を抜き取り、土を丁寧に落とす
- 鉢の中央へ株を置いて周りへ土を入れる
- 水をたっぷり与えて日陰~半日陰で管理する
苗を鉢へ植え付ける際、小さなものではすぐに植え替えが必要となるので、8号以上の鉢を使用してください。
キンモクセイの植え替えは、3月から4月頃が適期です。
病気・害虫
キンモクセイがかかりやすい病気には「褐斑病」や「先葉枯病」が挙げられます。
褐斑病にかかると葉に淡褐色の斑点ができ、徐々に灰褐色となって枯れていきます。被害を発見したら伝染しないようすぐに切除します。
先葉枯病は、葉の先端が淡褐色になり、後に灰白色に変化します。見つけたらすぐに葉を切り取り、落ち葉もすべて処分しましょう。
キンモクセイにつきやすい害虫にはハダニやカイガラムシがいます。
ハダニは白い粉のような小さな虫で、高温かつ乾燥する環境を好んで発生します。養分を吸い取るため、発見したらすぐに霧吹きや粘着テープなどで取り除きます。
置き場所の風通しが悪いとカイガラムシが発生しやすくなります。幼虫には殺虫剤が効果的ですが、成虫すると薬剤が効きにくくなるので、歯ブラシなどでこすり落として駆除しましょう。